今回は、
- 「休業損害」が認められるのは、どんなケースなのか?
- 給与所得者(会社勤めの方)の休業損害の計算方法
についてです。
交通事故における人損に対する賠償の中に、「休業損害」があります。
これは、交通事故の被害者が、負傷のために働くことができず、収入を失ったことによる損害です。
休業損害が認められるのは?
実際の労働の対価としての収入の減収分が賠償されます。
例えば、
- 交通事故が原因で、会社を休んだため、給与が減った or 支払われなかった
- 交通事故が原因で会社を休んでいたため、ボーナスが減った or 支払われなかった
といったケースがあります。
逆に、直接的な労働の対価ではない下記のようなものについては賠償されません。
- 会社役員の利益配分としての収入
- 株式の配当
- 地代・家賃収入
- 年金受給
- 生活保護受給
休業損害計算の原則
休業損害の賠償額の計算は、下記の計算式が原則です。
休業損害 = 日額基礎収入 × 休業日数
- 「日額基礎収入」
1日あたりの損害額。
仕事をしていたら得られたはずの収入。 - 「休業日数」
治療期間内で、実際に休業した日数のうち、傷害の内容・程度、治療過程、被害者の仕事内容などをみて、妥当と認められた日数。
休んだ日数=休業日数とは限りません。
給与所得者の休業損害の計算
では、ここからは、会社勤めされている方など、給与所得者の休業損害の計算方法を具体的に見ていきましょう。
給与所得者の日額基礎収入
先ほど紹介した休業損害の計算式の「日額基礎収入」は、下記のどちらかを用います。
- 事故前3ヶ月の給与の合計額 ÷ 90日
- 事故前1年間の給与の合計額 ÷ 365日
土日祝日は、日数にカウントします。
通常は、3ヶ月の給与額で計算します。
しかし、3ヶ月では、年間収入の平均を算出できない特別な事情がある場合は、1年間の給与額から算出します。
また、この給与の金額は、手取り金額ではなく、税金や社会保険料などの控除がされる前の金額を使います。
そして、この計算には、ボーナスは含みません。
ボーナスが減額されたり、支払われなかったりした場合は、別に計算します。
勤務先の給与規定などで、ボーナスが減額となった基準が明確である場合、勤務先から「賞与減額証明書」などをもらって、保険会社に提出すれば、損害として請求できます。
休業損害額の計算の具体例
では、具体的に計算してみましょう!
(条件)
8月1日に交通事故で受傷。
8月21日まで会社を休んで通院していた。
(休業日数21日)
5月給与:228,000円
6月給与:231,200円
7月給与:241,000円
日額基礎収入
- = (228,000円 + 231,200円 + 241,000円) ÷ 90日
- = 7,780円
休業損害額
- = 7,780円 × 21日
- = 163,380円
給与額の証明には、何が必要なのか?
事故前の給与額の証明には、通常、雇用主が発行する
- 休業損害証明書
- 源泉徴収票
を用います。
ただし、例えば、父親が経営する会社で働いている場合など、雇用主と被害者との関係次第では、上記の「休業損害証明書」や「源泉徴収票」の信用性が低く見られることがあります。
そのため、自治体が発行する「所得額証明書」など、公的機関による客観的資料を求められることもあります。
有給休暇を使った場合はどうなるか?
ケガの治療のために有給休暇を使った場合は、その日数も、休業日数に含める事が出来ます。
有給休暇を使えば、その分は休んでいないことになるので、その分の給与は支払われます。
しかし、交通事故に遭っていなければ、その有休休暇は、その時に使う必要はなかったわけです。
つまり、交通事故のために、有給休暇を使わなくてはいけなくなってしまったので、それに対して補償します。
今日のまとめ
- 交通事故が原因で、会社を休むなど、実際の労働の対価としての収入が減った場合、休業損害が認められる。
- 給与損害の原則は、 休業損害 = 日額基礎収入 × 休業日数
- 給与所得者の「日額基礎収入」は、通常、事故前3か月間の給与額から算出する。
- 給与額の証明には、雇用主が発行する「休業損害証明書」や「源泉徴収票」が必要。
- ケガの治療のために使った有給休暇も、休業日数に含むことが出来る。
今日は、給与所得者のケースを中心に見ましたが、後日、
- 会社役員
- 事業所得者
- 家事従事者(専業主婦)
- 日雇い
- アルバイト
のケースを見ていきます。
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